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シミの種類

[2022.07.10]

「シミ」といっても様々な種類がありシミのタイプによって原因や治療が異なります。過去のシミの治療歴もシミの鑑別には重要になります。代表的な「シミ」には以下のものがあります。

 

老人性色素斑(日光性黒子)

そばかす

肝斑

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)

炎症後色素沈着

 

老人性色素斑(日光性黒子)

いわゆるシミになります。これまでに浴びてきた紫外線の蓄積により表皮細胞内でなんらかの遺伝子変異が生じメラニン生成を促す遺伝子発現が持続的に活性化され、メラニン生成を促すET1やSCFなどの発現が増強しメラニン生成が高まり表皮に沈着した状態と考えられています。また、真皮の線維芽細胞の関与も指摘されHGFやKGF、SCFの発現増強が示されています。

組織学的には表皮突起の延長といった過角化を認める場合や、慢性的な紫外線の影響で基底層の断裂などによって真皮層へのメラノーシスを認める場合があります。

■治療

メラニンが沈着した角化細胞のみを取り除く、スポットでのレーザーや光(IPL)を使用した治療

→かさぶた形成を避けたい、色素沈着のリスクを抑えたい場合はIPL

 メラニンの色調が濃く大きいシミ、目や髪の生え際近くのシミではスポットでのレーザー治療

トレチノインとハイドロキノンを使用しメラニンが沈着した角化細胞の排出を促す治療

ピーリングによりメラニンが沈着した角化細胞の排出を促す治療

→繰り返すことで沈着したメラニンの排出を促していきます

 

などになります。メラニンが沈着した表皮が厚い場合や真皮層へのメラノーシスではレーザー治療が必要となり、回数も複数回必要となる場合があります。

 

そばかす

 

そばかすは遺伝性の色素沈着で幼少期から目立ちはじめ、思春期に濃くなり、その後は次第に薄くなっていくといわれています。鼻背や両頬上に1~3mm程の茶褐色の色素斑が出現し、眼瞼周囲や唇などの顔全体にできることがあります。原因はMC1Rの遺伝子変異によるものといわれています。そばかすは治療後の再発が起こりやすいといわれており、治療後の紫外線対策が重要となります。

組織学的には表皮突起の延長といった過角化は認めず、真皮層へのメラノーシスも認めません。

■治療

メラニンが沈着した角化細胞のみを取り除く、スポットでのレーザーや光(IPL)を使用した治療

→かさぶた形成を避けたい、色素沈着のリスクを抑えたい場合はIPL

 目や髪の生え際近くのシミではスポットでのレーザー治療

トレチノインとハイドロキノンを使用しメラニンが沈着した角化細胞の排出を促す治療

ピーリングによりメラニンが沈着した角化細胞の排出を促す治療

→繰り返すことで沈着したメラニンの排出を促していきます

 

などになります。

 

肝斑

肝斑は30~40代の女性に多く見られ、両頬、口周囲、こめかみ周囲など左右対称にできるもやっと広がる灰褐色の色素斑です。はっきりとした原因は不明ですが、女性ホルモン、紫外線、摩擦がその発症増悪に関与しています。メラノサイトには表皮細胞だけでなく、真皮線維芽細胞や毛細血管を含めた関与が考えられ、これらの細胞から分泌されるαMSH、ACTH、IL‐1、SCF、VEGFなどによりメラニン産生が亢進しています。

組織学的には表皮突起の延長といった過角化は認めず、表皮のメラニンの増加と真皮の光線性弾力線維変性を特長とし、真皮のメラノーシスを伴う場合もあります。

■治療

トラネキサム酸などの内服(基本となります)

トラネキサム酸などのエレクトロポレーションやメソセラピー

トレチノインとハイドロキノンを使用しメラニンが沈着した角化細胞の排出を促しメラノサイトによるメラニン合成を抑える治療

ピーリングによる排出促進

レーザートーニング

などになります。真皮層へのアプローチである、フラクショナルマイクロニードルRFとトーニングの併用がより肝斑治療に効果的であったという報告やHIFU治療が有効であったとの報告があります。

当院ではピコトーニングと真皮層へのアプローチであるピコフラクショナルを組み合わせたピコダブルがあります。

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)

両頬や鼻、まぶた周辺に大きさが3㎜程の灰褐色でやや青みを帯びたしみが多発します。思春期以降の女性にできやすいといわれています。本来真皮にメラノサイトは存在しませんが、真皮メラノサイトが先天的に存在し、何らかの影響でメラノサイトが活性化され、メラニンが生成沈着した真皮浅層のメラノサイトーシスの状態です。太田母斑と比べメラノーシスは真皮浅層に位置し、表皮にもメラニン沈着を認めます。治療は光治療では効果が乏しいことが多いです。YoshimuraらはADM患者62例中、6例肝斑の合併があったと報告し、ADMと肝斑の合併には治療上注意が必要となります。

■治療

レーザーを使用した治療を3~5回程度行い真皮メラノサイトおよび沈着したメラノソームを破壊し分解排出する治療

が軸になります。シミ治療と異なりかさぶた化しないこともしばしばあります。照射後1~3か月程度かけて徐々に壊されたメラノソームは排出され、薄くなっていきいます。照射後の炎症後色素沈着の予防や治療もかねて、トーニングやトレチノインとハイドロキノンを使用しメラニンが沈着した角化細胞の排出を促す治療、内服治療を組み合わせて行っていきます。

炎症後色素沈着

炎症後色素沈着はケガや火傷、ニキビなどの皮膚への刺激や炎症によりメラノサイトが活性化し、メラニン生成が亢進し沈着した状態です。レーザー治療やIPL治療などのその原因となることもあります。

大部分は一過性で炎症の原因がなくなると、表皮の角化細胞に沈着したメラニンはターンオーバーとともに排出され時間とともに改善していき、顔だと6か月、体だと数年程度といわれています。

しかしながら、強い炎症や炎症を繰り返し起こしていると真皮層にメラニンが滴落したメラノーシスの状態となり、排出されずに残ってしまう(炎症後色素沈着が1年以上残っている場合)ことがあります。(タトゥーは真皮にインクを入れる施術ですが、インクではなく自身のメラニンで生じた状態です)

 

■治療

炎症後色素沈着の比較的早期では、

 トラネキサム酸などの内服

 トラネキサム酸やビタミンCなどの導入

 ハイドロキノンやアゼライン酸などの美白剤の外用(炎症の状態によりトレチノインの併用も検討)

肌の炎症の状態をみながら、

 レーザートーニング

 IPL

 

真皮層への滴落が疑われる場合、

 レーザートーニング

 スポットでのレーザーや光を使用した治療

などになります。

 

参考資料

宮田 成章: 肝斑の治療 概論 (特集 今,肝斑について考える. Pepars (175), 1-4, 2021-07

吉村 浩太郎: トレチノインとハイドロキノン(イチからはじめる美容皮膚科マニュアル). デルマ (321), 44-52, 2022-04.

Kotaro Yoshimura et al. Repeated treatment protocols for melasma and acquired dermal melanocytosis. Dermatol Surg. 2006 Mar;32(3):365-71.

船坂 陽子:第113回日本皮膚科学会総会⑨ 教育講演35-1 顔面のシミの病態と鑑別診断(2015.1.15放送)

船坂 陽子. シミの鑑別と診断別治療の実際 (特集 光老化の最新知識). 美容皮膚医学beauty 3(11), 29-39, 2020-11

Vasanop Vachiramon et al: A study of efficacy and safety of high-intensity focused ultrasound for the treatment of melasma in Asians: A single-blinded, randomized, split-face, pilot study. J Cosmet Dermatol. 2020 Feb;19(2):375-381.

Jin Woong Jung et al. A Face-Split Study to Evaluate the Effects of Microneedle Radiofrequency with Q-Switched Nd:YAG Laser for the Treatment of Melasma. Ann Dermatol. 2019 Apr;31(2):133-138.

Behzad Iranmanesh et al: The efficacy of energy-based devices combination therapy for melasma. Dermatol Ther. 2021 May;34(3):e14927.

渡辺 晋一. 皮膚科におけるレーザー治療の基本原理. 日本レーザー医学会誌 27 (4), 315-326, 2006

根岸 圭, 松永 佳世子.  Intense Pulsed Lightによる美容皮膚治療. 日本レーザー医学会誌 31 (1), 53-60, 2009

 

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