ジュベルックとマックーム
ジュベルック、マックームともに「ポリ乳酸」という成分が使用されています。
ポリ乳酸は体内で1~2年程かけて徐々に吸収分解される成分として、手術用縫合糸など米国FDAなどで承認されている安全性の高い成分です。
効果の発現を実感できるタイミングについて:
ポリ乳酸の分解が進み、コラーゲンの促進が促された結果のタイミングとなるため、最初の施術から6か月後頃が施術の効果をより実感できます。
〇ポリ乳酸の歴史
ポリ乳酸はトウモロコシ、セルロース、サトウキビ、ジャガイモなどのでんぷんから製造される植物由来のポリエステルです。
1800 年代、ペルーズにより低分子量 PLA を得ることに成功し、1932 年、デュポンの科学者ウォーレス・ヒューム・カロザースにより PLA の合成に成功しました。1954年に同社により高分子量PLAを合成することが可能となりました。その後、生体内での生分解性および無毒化の研究が進み、吸収性縫合糸材料、プレート、ネジなどに使用されるようになりました。
注射用の製剤としては1999 年に、New-Fill という商品名で充填剤としての使⽤が承認されました。2004 年に、SculptraがHIV 関連脂肪萎縮症の治療薬として FDA によって承認され、その後美容目的での使用が拡大されていきました。
〇ポリ乳酸の違い(ジュベルックとマックーム)
ポリ乳酸にも若干の違いがあり、
ジュベルック:ポリDL乳酸(PDLLA:Poly-DL-lactic acid)
マックーム:ポリL乳酸(PLLA:Poly-L-lactic acid)
という成分となります。PLLAとPDLLAの大きな違いは、PLLAがクリスタル状の結晶体に対して、PDLLAは丸形の粒子で内部が網状構造となっています。そのため、PDLLAの方が分解されやすく、分解時の酸の放出がそれほど強くないため、PLLAより安全に使用することができるといわれています。
PLLAは高い効果が得られやすい一方で、代表的な副作用である、しこりを十分気を付ける必要があります。
マックームはポテンツァを製造しているジェイシス社が公式に販売している製剤となりますが、皮下注射について韓国MFDS(旧KFDA)での承認を得ておらず、当院ではポテンツァでの皮下への導入のみの取り扱いとなります。
ジュベルックは韓国MFDS、アメリカのFDAの承認を受けているため、局所注射が可能となります。当院ではそれに則り、皮下への導入方法についても複数取り扱いをさせていただいております。
また、ジュベルックにはいわゆるジュベルック(粒子径 24μm、最大34μm)とジュベルックボリュームといわれるレニスナ(粒子径 51μm、最大81μm)がありますが、ジュベルックのみの取り扱いとなります。
ダーマペン、ポテンツァ、手打ち注射。
〇ジュベルック(PDLLA)の導入方法の違い
ポテンツァ:
ポテンツァでの導入はCPチップというチップでジュベルックを皮膚に塗布した上で陰圧をかけながら針を刺し、皮下へと薬剤を的確にかつ均一に導入していきます。
高周波によるRF治療との組み合わせによってダウンタイムをより短く、熱による効果との相乗効果が期待できます。
クレーター部などの集中的な導入は可能ですが、剣山状のチップのショット数の上限があるため、剣山部分の隙間にあたる針が刺さらない部分では、周囲から薬剤が広がることでカバーは可能ですが、全顔での緻密な導入は難しい可能性があります。
また、外せないピアスやリングがある場合は施術ができず、金属プレート上はポテンツァの施術は不可となるため、気になる部位の施術ができない可能性があります。
ダーマペン:
ダーマペンは先端が上限に高速に動く微細な針を無数に刺し、皮下へと薬剤を導入していきます。
ポテンツァと異なり、熱が加わらないため止血ができず内出血がポテンツァより長引く可能性があります。
高速に針が上下に動き、無数に針を刺していくためムラなく緻密な導入が可能となりますが、水光注射やポテンツァのように陰圧をかけるわけではないので導入量がポテンツァと比較し少ない可能性があります。
ポテンツァと異なり外せない金属類がある場合でも施術可能です。
手打ち:
医師による皮下への手打ち注射となります。薬剤をよりしっかりと皮下に注入し、注入部位から周囲に拡散していくため、施術部位をしっかりとカバーすることが可能です。
手打ち注射の場合は痛みが強い点と、機械的な注入ではないため、注入ムラが出る可能性があること、極めて稀ですが塞栓のリスクがあるります。
以下引用となり、極めて稀ではありますがポリ乳酸製剤での血管塞栓のリスクがあるため、注入部位は当院では頬のみ(ほうれい線は除く)と限らさせていただきます。
PDLLA製剤の眉間への注射による網膜動脈の閉塞例
I Wang er al. BMC Ophthalmol. 2023 Mar 6;23(1):86.
※PDLLA 微粒子は、表面に複数の細孔を持つ球形で、直径は 30 ~ 70 μmの製剤を使用
PLLA製剤の側頭部への注射による網膜動脈の閉塞例
Retinal artery occlusion following cosmetic injection of poly-L-lactic acid.
Chao-Wei Wu, Horng-Jiun Wu. Taiwan J Ophthalmol. 2021 Apr 17;11(3):317-320.
※PLLA 微粒子は固体で、形状が不規則で、直径は 40 ~ 63 μm の製剤を使用。
製剤の粒子径については下記より引用
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7154629/
ポテンツァと異なり外せない金属類がある場合でも施術可能です。
〇リスク、副作用
施術時の痛み、施術部位の内出血・血種、腫れ、赤味、熱感、色素沈着、極めて稀にしこり、手打ち注射時に極めて稀に血管塞栓