メニュー

トレチノイン・ハイドロキノン療法とは?

[2022.07.07]

メラニンの排出促進するトレチノインとメラニンの生成を抑えるハイドロキノンを組み合わせた外用治療です。肝斑治療の他にレーザー治療後などの炎症後色素沈着やレーザー治療と併用されます。

トレチノイン、ハイドロキノンとも皮膚刺激性があるため肌に合った適切な濃度を使用し医師の指示の下治療を行っていきます。

当院でのトレチノインは肌への刺激性を考え、低濃度での治療をご提案させていただいております。レーザー治療との併用(レーザー治療後の色素沈着治療、肝斑治療の効果を高める等)を前提としておりますのでご了承ください。

 

トレチノイン

 

 トレチノインはレチノールの1種であるレチノイン酸のオールトランス型のことをいいます。

表皮細胞の増殖促進と角質の剥離を促進しターンオーバーが促進され肝斑や日光性色素班、炎症後色素沈着等沈着したメラニンの排出を促します。

他に、表皮角化細胞間や角質にヒアルロン酸などのムコ多糖類の沈着を促し表皮の水分量増やす働きや、真皮線維芽細胞のコラーゲン産生促進、MMP(細胞外マトリックス分解酵素)抑制などの作用により光老化に対する抑制効果による肌のリジュビネーション効果があるといわれています。

トレチノインを含むビタミンA誘導体ではメラノソームの転送抑制、チロシナーゼの転写阻害、メラニン合成阻害の作用もあるといわれています(メラノサイトへの作用については作用がないとする意見もあります)。

トレチノインは継続した使用により耐性化を起こし、本来の効果を発揮できなくなるため2~3か月程度の使用とし、1~2か月以上の休薬期間が必要といわれています。

トレチノインを使用した外用薬治療では、Kligman’s formula. Triple combination cream(0.1%トレチノイン、5.0%ハイドロキノン、0.1%デキサメタゾン)が有名です。ステロイド剤が含まれている肌の炎症を抑える働きはありますが、長期使用による皮膚委縮などの副作用の可能性があります。

当院では原則的にレーザー治療との併用および肌への刺激性や安全性を考慮し、トレチノインは0.025%クリームを基本とし、0.05%もしくは0.0125%をご提案させていただいております。

また、耐性化のリスクを考え1か月程度の使用でのご提案をさせていただいております。

過去にセラピューティックのご経験がある方、レチノール系(レチノール、パルミチン酸レチノール、グラナクティブレチノイドなど)を使用している方では期待している効果が得られない可能性があります。

トレチノインの濃度は水性ゲル基材やクリーム基材などの基材により皮膚浸透度がことなるため、過去に使用した濃度であっても基材が変わることにより効果が異なる可能性があります。

注意事項
    • 妊娠中、妊娠の可能性がある方はご使用できません。
    • 外用開始後の1~3日後から1~2週間以内は皮むけや赤み、かゆみがでることがあります。強い症状がある際は使用頻度を減らす(毎日から2日に1回、3日に1回と減らします)、もしくは中止をし症状が改善するかを観察し医師の診察を受けてください。
    • 皮膚刺激性による接触皮膚炎で炎症後色素沈着を起こすことがあります。
    • 使用期限は2か月となります。冷蔵庫での保管をお願いします。

ハイドロキノン

ハイドロキノンはチロシナーゼの阻害をし、メラノサイトによるメラニンの合成阻害作用があります。細胞毒性もあるといわれ、白斑のリスクがあるといわれていますが、5%程度の濃度では色素脱出の報告はありません。しかし、日中強い紫外線を浴びると逆にシミが濃くなることがあり、朝使用する場合は徹底した紫外線対策が必要となります。

ハイドロキノンのみでの使用では、すでに沈着したメラニンへは効果がないためターンオーバーによる排出を待つ必要があり効果の実感まで2か月程度必要となります。

一方で、ハイドロキノンは外因性組織黒変症をおこす原因の1つとも考えられています。1%~2%のハイドロキノンクリームを⾧期間(> 6か⽉)使⽤した後、いくつかの⺠族で外因性組織褐変症を引き起こすことが報告されています。

当院では、外因性組織黒変症のリスクを考えハイドロキノンの使用は4か月程度までとし、休薬期間を置くことをおすすめさせていただいております。

 

注意事項
    • お顔への使用前に手首などでパッチテストをおこなってください。強い赤み刺激感などの症状がある際は、使用頻度を減らす(毎日から2日に1回、3日に1回と減らします)、もしくは中止をし症状が改善するかを観察し医師の診察を受けてください。
    • 皮膚刺激性による接触皮膚炎で炎症後色素沈着を起こすことがあります。
    • 使用期限は2か月となります。冷蔵庫での保管をお願いします。
    • 紫外線や温度の影響を受け、変色する場合があり、その際は使用せず新しいものを使用するようお願いします。

参考資料

吉村 浩太郎: トレチノインとハイドロキノン(イチからはじめる美容皮膚科マニュアル). デルマ (321), 44-52, 2022-04.

長濱 通子: 肝斑に対する外用治療 (特集 今,肝斑について考える. Pepars (175), 9-12, 2021-07

ロドデノール誘発性脱色素斑医療者(皮膚科医)向けの診療の手引き. 日本皮膚科学会 ロドデノール含有化粧品について(ロドデノール誘発性脱色素斑)https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/news/1405558264_1.pdf

Kligman AM et al. A new formula for depigmenting human skin. Arch Dermatol. 1975;111:40–48. 

吉村浩太郎. レチノイドの作用機序. 皮膚科診療プラクティス , 2004

古川 福実ほか編. ケミカルピーリング これが私のコツと技. 改訂2版. 南山堂, 東京, 2009

F Alan Andersen et al. Final amended safety assessment of hydroquinone as used in cosmetics. Int J Toxicol. Nov-Dec 2010;29(6 Suppl):274S-87.

 

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME